不動産・リース契約でよくある、法人決算書の“分かってもらえない”問題

こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。

銀行融資や不動産の契約、社宅やリース契約などで
「決算書や申告書を提出してください」と言われることはよくあります。

とくに法人の場合、銀行は慣れているものの、
不動産会社やリース会社では税務書類に不慣れなことも多く、
やり取りがスムーズに進まないことがあります。

今日は、法人が書類を提出する場面で起きがちな「あるある」をまとめてみます。
事前に心の準備をしておくと安心です。


法人なのに個人向け書類を求められる?

「確定申告書と青色申告決算書を出してください」と言われることがあります。

この言い方は、個人事業主が提出する書類の組み合わせを
そのまま想定しているケースが多く、法人には当てはまりません。

法人の場合によく必要となるのは、

  • 法人税申告書(場合によっては地方税申告書)
  • 決算書(貸借対照表・損益計算書など)
  • e-Tax受信通知(受付日時の記載があるメール詳細)

といった書類です。

法人の申告書も広い意味では「確定申告書」と呼ばれますが、
実務では個人事業主用と混同されやすいため、

「法人の確定申告書=法人税申告書です」

と補足して伝えると誤解が解けやすくなります。


法人税額が違うと指摘される

提出を求められたのが法人税の申告書だけだった場合、
決算書の「法人税等」と受信通知の「法人税額」を突き合わせると、
「金額が違う」と指摘されることがあります。

これは仕組みを知らないと不思議に思われますが、理由はシンプルです。

  • 決算書の「法人税等」には、法人税(国税)だけでなく、地方法人税・法人住民税・法人事業税まで含まれている
  • 一方で、国税の受信通知に記載されるのは法人税と地方法人税のみ

そのため、決算書の「法人税等」と受信通知の「法人税額」が一致しないのは当然です。

どちらも正しい数値なのですが、不慣れな担当者には「金額が合っていない」と受け取られがちです。
こうした誤解を避けるために、法人市民税や法人県民税の申告書もあわせて提出しておくとスムーズです。


課税所得と当期純利益が一致しない

法人税申告書そのものを求められず、
受信通知と決算書(貸借対照表・損益計算書)だけを提出するよう言われるケースもあります。

その際に「決算書の当期純利益と、受信通知に記載された課税所得が違いますよ」
と指摘されることがあります。

しかし、これは合わなくて当然です。

  • 決算書に記載される「当期純利益」は会計上の数値
  • 受信通知に記載される「課税所得(課税標準)」は、会計上の利益をベースに税務調整を加減算した後の数値

申告内容と決算書の整合を確かめるなら、見るべきは決算書ではなく、
法人税申告書の別表4です。

説明の際には、

「課税所得は会計上の利益に税務調整を加えて算出されるため、決算書の利益とは一致しません。別表4と突き合わせると整合します」

と伝えると誤解が解けやすくなります。


まとめ

法人の決算書や申告書は、税務に慣れていない相手にとっては分かりにくいものです。
こうした誤解ややり取りの行き違いは、法人であれば誰もが一度は経験する「あるある」といえるでしょう。

担当者に「どこを突合して審査するのか」を先に確認しておくと安心です。

例えば、申告書と決算書の整合性まで確認したいのであれば、
受信通知と決算書だけ求められていても、実際には申告書も必要になると分かります。

いっそ最初から申告書一式をまとめて提出してしまうと、
余計なやり取りやイライラを減らし、スムーズに進むことが多いです。