外注費の源泉徴収まとめ:誰に・いくら・どうやって納める?

こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。

外注費を支払うときに「源泉徴収が必要かどうか」「いくら引くのか」「どう納めるのか」。これは実務でとても迷いやすいテーマです。支払う側に義務があるため、処理を誤ると後から追徴されることもあります。ここで整理しておきましょう。


源泉徴収が必要になる外注費とは?

外注費でも源泉徴収が必要なのは「個人への支払いで、かつ国税庁が定める報酬・料金の8類型」に当てはまる場合です。

代表的には次のようなものがあります。

  • 原稿料や講演料、作曲料、翻訳料、校正料など
  • 弁護士・税理士・司法書士など士業への報酬
  • 芸能人やプロスポーツ選手への報酬
  • 外交員などへの報酬

一方で、法人に支払う場合は原則として不要です。

詳しい対象業種はこちらで確認してください
源泉徴収の対象となる報酬・料金(国税庁PDF)


内容を区分して判定が必要なケース

外注費でも、仕事の内容によって源泉徴収の要否が変わります。特に迷いやすいのが次の業種です。

  • デザイン料
    グラフィック・広告・パッケージなどのデザインは源泉対象。施工とセットの契約なら、デザイン部分を区分して源泉します。
  • HP制作
    原稿作成や写真・翻訳といったコンテンツ部分は源泉対象。単なるコーディング作業は対象外。請求がまとめられているときは、対象部分を切り分けて判断するのが安全です。
  • プログラム開発
    開発作業の請負代金は原則対象外。ただしソフトのライセンス料(著作権の使用料)を個人に払う場合は対象になります。

ポイントは「外注費だから一律で源泉」ではなく、業務内容ごとに判定することです。


消費税を考慮した計算方法

基本ルール

  • 請求に 消費税が含まれている場合、その消費税部分は源泉徴収の対象外
  • 源泉の計算は「報酬本体部分」に対して行います

計算式

  • 報酬部分が100万円以下の場合
    報酬部分 × 10.21%(1円未満切捨て)
  • 報酬部分が100万円を超える場合
    (報酬部分 − 100万円)× 20.42% + 102,100円(1円未満切捨て)

計算例


請求額 110,000円(報酬 100,000円+消費税 10,000円)の場合

  • 源泉所得税:100,000円 × 10.21% = 10,210円
  • 振込額:110,000円 − 10,210円 = 99,790円

納付の流れ

源泉徴収した税金は「源泉所得税」として納めます。

  • 期限:支払月の翌月10日まで
  • 方法:金融機関や郵便局で納付書を使用/e-Taxやダイレクト納付も可能
  • 納付書の種類
    • 原稿料・講演料など → 「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」
    • 弁護士・税理士など → 「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」

納期の特例は一部だけ

小規模事業者は「納期の特例」を申請すれば年2回にまとめて納められますが、対象は給与・退職と弁護士・税理士などの一定の報酬に限られます

原稿料や講演料など、外注費の多くは対象外なので、原則どおり翌月10日納付が必要です。


「源泉しないで」と言われたら?

実務では、外注先から「源泉徴収しないでください」と言われることがあります。
しかし、源泉徴収は発注側の義務であり、相手の希望で免除できるものではありません。

もし本来必要なのに源泉徴収をしなかった場合、後から税務署に指摘され、発注側に 不納付加算税(原則10%/期限後自主納付なら5%)や延滞税 が課されます。

リスクを負うのは外注先ではなく、支払う側です。


実務でのチェックリスト

  1. 支払先は法人か個人か
  2. 個人なら国税庁の「報酬・料金」一覧に該当するか確認
  3. 消費税を切り分けて、報酬部分に源泉を計算
  4. 税額を差し引いた金額を支払い、明細を交付
  5. 翌月10日までに税務署へ納付

まとめ

  • 外注費の源泉徴収は「個人+特定の業務」の場合のみ必要
  • 消費税は源泉の対象外、必ず報酬部分と切り分けて計算
  • 計算式は「100万円以下=報酬部分×10.21%」「100万円超=(報酬−100万)×20.42%+102,100円」
  • 納付は翌月10日まで、納期特例は一部の報酬だけ対象
  • 「源泉しないで」と言われても応じると支払側に 不納付加算税や延滞税 のリスク

外注費の源泉徴収は、「誰に・何を払うか」「報酬と消費税を分けるか」を押さえておけば実務はシンプルです。支払前に確認する習慣をつけることで、安心して取引を続けられます。