2割特例の終わり方、意外とややこしい話

こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。

インボイス制度の経過措置として設けられた「2割特例」。
仕入税額控除を売上税額の2割で計算できる便利な仕組みですが、いつまで使えるのかという質問をよくいただきます。

今回は、その「期限」と「簡易課税への切り替え時期」について整理してみます。


2割特例の期限は「令和8年9月30日を含む課税期間」まで

国税庁の説明では、
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの“日”の属する各課税期間に適用できるとされています。

つまり、「令和8年9月30日を含む課税期間まで」が対象です。
“9月30日まで”ではなく、“9月30日を含む期間”という点がポイントです。


個人事業主の場合

個人事業主の課税期間は、毎年1月1日から12月31日まで。

したがって、令和8年分(2026年分)までが2割特例の対象になります。
翌年の令和9年分(2027年分)からは、通常の仕入税額控除計算(本則または簡易課税)になります。


法人の場合(決算月別)

法人は事業年度によって、2割特例を使える最終期が変わります。
「その事業年度に令和8年9月30日が入っているか」で判断します。

  • 9月決算法人(10月1日〜翌9月30日)
     → 令和8年9月期まで(2025/10/1〜2026/9/30)
  • 10月決算法人(11月1日〜翌10月31日)
     → 令和8年10月期まで(2025/11/1〜2026/10/31)
  • 8月決算法人(9月1日〜翌8月31日)
     → 令和9年8月期まで(2026/9/1〜2027/8/31)
  • 3月決算法人(4月1日〜翌3月31日)
     → 令和9年3月期まで(2026/4/1〜2027/3/31)

このように、決算月によって“最後の1期”が少しずつずれる点に注意が必要です。


簡易課税に切り替える場合の届出期限

2割特例が終わったあと、簡易課税を使いたい場合は、
「簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です。

原則として、
適用を受けたい課税期間の初日の前日までに提出します。

たとえば:

  • 個人事業主が令和9年分(2027年分)から簡易課税を使いたい場合
     → 令和8年12月31日までに提出。
  • 9月決算法人が令和8年10月期(2026年10月1日開始)から使いたい場合
     → 令和8年9月30日までに提出。

ただし、2割特例を適用していた事業者には、
「翌課税期間中に届出しても、その期から適用できる」という特例が設けられています。


まとめ

  • 2割特例は「令和8年9月30日を含む課税期間」まで適用
  • 個人は令和8年分(2026年分)まで
  • 法人は決算月により最終期が異なる
  • 簡易課税を使うなら、原則は期首前日までに届出(経過措置あり)

「9月30日を含む課税期間まで」という表現が少しややこしいですが、
ご自身の決算月を一度確認しておくと安心です。