「究極のペペロンチーノ」と「正しい経営」

こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。

先日、SNSでペペロンチーノについての興味深いやり取りを見かけました。

ペペロンチーノに限らず、料理の世界では「究極の」「本物の」「正統な」といった議論がよくあります。

ニンニクと唐辛子とオリーブオイルだけで作るべきだとか、味の素を入れるのは邪道だとか。

そのやり取りでは、「今日はうま味を強めに、今日はシンプルに、といった具合に、その日の気分や場面に合わせて作れば良いのではないか」という問いが投げかけられていました。

それに対するエリックサウスのイナダシュンスケさんの回答が、なかなか興味深いものでした。(エリックサウス大好き)

この話、料理に限らず、経営にも通じるところがあるなと感じました。


なお、普段は「自営業」と「経営」を必ずしも同じものとして捉えていませんが、今回は話の流れ上、あえて区別せずに書いています。

そもそも、求めているものが違う

イナダさんは、おいしさには「押し寄せるおいしさ」と「追いかけるおいしさ」がある、と説明されていました。

前者は、うま味や濃厚さなど、食べた瞬間に分かりやすいおいしさ。

後者は、シンプルな素材の中から、自分で味わいを探して楽しむようなおいしさ。

どちらが優れているという話ではなく、そのとき何を食べたいかによって、求めるものが変わるわけです。

ところが、これをひとつの物差しで評価しようとすると、途端に話がややこしくなります。

そもそも目指しているものが違うのに、どちらが正しいかを議論しても、なかなか結論は出ません。

経営にも「正解」があふれている

経営の世界にも、似たような話がたくさんあります。

売上は伸ばすべき、従業員は増やすべき、事業は拡大すべき。

あるいは、経営者なら人脈を広げるべき、積極的に交流会へ参加すべき、といった話もあります。

こうした話には、それぞれ理由があります。

売上が増えればできることも増えますし、人を雇うことで、自分ひとりではできなかった仕事にも取り組めるようになります。

ただ、それぞれの方法には、得られるものと引き換えに失うものもあります。

売上を増やせば仕事量(訴訟リスク)が増えるかもしれませんし、人を雇えば管理する仕事(退職リスク)も生まれます。

何かを選ぶということは、別の何かを選ばないということでもあります。

それなのに、売上や従業員数といった分かりやすい数字だけで経営を評価すると、こうした部分が見えにくくなります。

分かりやすい価値ばかりが評価される

料理の話に戻ると、うま味が強い、味が濃い、といったおいしさは比較的分かりやすいものです。

一方で、素材の微妙な風味や、あえて何かを足さないことで生まれる味わいは、言葉にするのが難しかったりします。

経営も同じようなところがあります。

売上が前年比150%になった、従業員が10人になった、新しい店舗を出した。

こうした成果は数字や事実で説明しやすく、周囲にも伝わりやすいものです。

一方で、売上や利益を維持、あるいは少しずつ増やしながら、工夫をして仕事の負担を減らしたり、自由な時間を増やしたりする。

これも立派な経営上の成果ですが、数字だけを見ていても、なかなか伝わりません。

ただ、数字に表れやすいことと、価値が大きいことは別の話です。

分かりやすいものばかりを評価していると、本来大切にしたかったものを見失うこともあるのではないでしょうか。

正解を覚えるより、仕組みを理解する

もうひとつ、ペペロンチーノの話で面白いと思ったのが、レシピと料理の構造の違いです。

レシピを覚えれば、ひとまず同じ料理を作ることはできます。

ただ、なぜその材料を使うのか、どんな役割があるのかを理解していれば、好みに合わせて調整することもできます。

経営も、誰かの成功事例をそのまま真似するより、その方法がなぜうまくいったのかを理解する方が応用が利きます。

例えば、売上を増やすことが目的なのか、利益を増やすことが目的なのか。それとも、働く時間を減らしたいのか。

目的によって、選ぶべき方法は変わってきます。

成功事例には、その人の能力や環境、タイミングなど、さまざまな前提条件があります。

結果だけを見て真似しても、同じ結果になるとは限りません。

経営系インフルエンサーがよく口にする「本気」や「覚悟」にも、何か構造的な裏付けはあるのでしょうか(笑)。

「本物」や「究極」にこだわりすぎない

もちろん、料理には基本的な技術がありますし、経営にも知っておいた方が良い原則はあります。

ただ、基本を理解することと、そこから外れたものを否定することは別です。

何を目指しているのかが違えば、選ぶ方法も変わります。

それをひとつの物差しで比較して、どちらが優れているかを決めようとするから、話がややこしくなるのでしょう。

ペペロンチーノに味の素を入れる日があっても、入れない日があっても良い。

その日の気分で食べたいものが変わるように、経営で大切にしたいものも、状況によって変わっていくはずです。

「究極の正解」を探すより、何を求めているのかを理解して、その都度選べること。

料理も経営も、その方がずっと自由で面白いと思います。

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伊藤 功明(税理士)
仙台を拠点に、個人事業主や小さな法人の税務をサポートしています。
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