こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。
独立やフリーランス向けの情報を見ていると、「1人の限界を超えるにはマネジメントが必要」といった言葉をよく目にします。大事な視点ではあるんですが、私はそこに少し違和感を覚えることがあります。
「1人の限界」を超える方法は本当にマネジメント?
たとえば、「単価を上げたい」「小さな案件ばかりで悩んでいる」「将来の働き方が不安」といった声に対して、“マネジメント”を勧めることがあります。でも正直、その段階でマネジメントを持ち出すのはちょっと危ないと思うんです。
確かに、自分じゃなくてもできる簡単な作業を外にお願いするのは一つの方法です。記録や入力みたいな補助を少し任せるだけでも、かなり時間に余裕が生まれます。これは気軽に取り入れられる工夫でしょう。
でも、本当に取り組むべきは「マネジメント」ではありません。
例えば、ドラッカーの定義ではマネジメントとは「人を通じて成果を上げる仕組みをつくること」とされています。アルバイトや外注のように部分的に手伝ってもらうのではなく、人を育成して自分の分身をつくり、チームとして成果を出す──つまり、人を本格的に雇うことを指します。
それよりも先に大事なのは、自分の仕事の価値を見直すことです。マーケティングを通じて単価を上げる工夫をする方が、ずっと現実的で効果があります。
人を本格的に雇うと、自転車操業になりやすい
人を本格的に雇えば、自分が楽になるように思えるかもしれません。任せた分の時間を使って単価を上げる工夫に集中できる──そんなイメージを抱きがちです。ところが現実は、そう単純にはいきません。
まず、人を採用しても即戦力になるとは限りません。スキルの差や仕事の相性の問題もあり、育成の手間がかかります。その間はむしろ自分の負担が増えてしまうことも少なくありません。
また、「今すぐ手を空けたい」という短期的なニーズに対して、採用というのはどちらかというと長期的な打開策です。このズレが矛盾を生み、期待した効果が出ずに苦しくなってしまうのです。
さらに、人を抱えれば固定費や人件費が発生します。そのプレッシャーから、やりたくない案件まで受けざるを得なくなり、自転車操業に陥るケースは珍しくありません。
まずはマーケティングと、小さなガチャを回すこと
フリーランスにとって大事なのは「人を増やすこと」より「選ばれる仕組みを作ること」です。
- 自分の強みをはっきりさせる
- 単価を見直す
- 仕事を選ぶ基準を持つ
加えて、小さなガチャを回すように単価アップの実験をしてみるのも効果的です。いきなり大幅に値上げするのではなく、少しずつ価格を試してみる。お客様の反応を確かめながら、どこまで受け入れられるかを探っていく。この小さなチャレンジを積み重ねることで、無理なく単価を上げることができます。
こうした工夫で“1人の限界”は意外と広がります。マネジメントが本格的に必要になるのは、事業をスケールさせようと覚悟した段階に入ってからです。
段階を踏んで進もう
「1人の限界」という言葉に振り回されて、焦って人を本格的に雇う必要はありません。フリーランスや小規模事業者が次のステージに進むためには、まずは単価を上げ、仕事を選び、マーケティングで自分の立ち位置を整えることが先です。
もちろん、単価を上げにくいビジネスモデルもありますし、どうしても工夫が効かない場合もあります。そんなときには「人を雇う」という選択肢が現実的になることもあるでしょう。
ただ、その前に一度立ち止まって「本当に今マネジメントが必要なのか」を考えてみることをおすすめします。少し工夫するだけで、無理に拡大しなくても続けられる道が見えるかもしれません。