見落としがちな“家事消費”とは?確定申告で要注意

こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。

突然ですが、みなさん「家事按分」はご存じですよね?
自宅兼事務所の光熱費や通信費などを、事業とプライベートで按分して経費計上する、あの処理です。

では、「家事消費」という言葉はご存じでしょうか?実はこれ、確定申告書の中にしっかり項目があるのですが、見落としている方が意外と多いのです。業界に入って十数年、多くの確定申告書を拝見してきましたが、伺ってみて気付くケースに何度も出会いました。

家事消費とは?

家事消費とは、事業用に仕入れた商品や製品を、自分や家族のために消費した分のことをいいます。
仕入れや経費として計上したものを自家利用する場合、それを「売上」に振り替える必要があるのです。

青色申告決算書や収支内訳書をよーく見ていただくと、「家事消費」という欄が用意されています。普段は気にしていないかもしれませんが、実はここに記載しなければならない取引があるのです。

具体的な家事消費の例

イメージが湧きやすいように、具体例を挙げてみます。

  • 飲食店を経営していて、仕入れた食材を余らせて自分で食べた分
     ※ただし廃棄した分は対象外。実際に自分で消費した場合だけです。
  • 健康食品の販売業で、自社商品を自分や家族で使った分
  • ピラティススタジオで販売している靴下やグッズを、自分用に回した分

「余ったから食べただけ」「試しに自分で使ってみただけ」と思いがちですが、仕入や経費に含めている以上は売上として処理が必要になります。

家事消費の計算方法

家事消費として計上する金額は、「販売価額」が原則です。
販売価額が明らかでない場合には、仕入価額や製造原価を基準に算定します。

  • 飲食店で仕入れた食材を自分で食べた場合
     → メニュー価格で算入
  • 健康食品を自分で消費した場合
     → 自社の販売価格を基準
  • 製造業の場合
     → 自社で作った製品を使ったときは製造原価

消費税との関係

家事消費は「対価を得ていない取引」ですが、消費税法上は「事業者が事業として対価を得ないで行う資産の譲渡等」として課税売上に含まれます。

つまり課税事業者であれば、家事消費に対しても消費税を計算する必要があります。

まとめ

「家事按分」はよく知られていますが、「家事消費」は見落とされがちなポイントです。
決算書にはしっかり欄が用意されていて、所得税・消費税の両方に影響する可能性があります。

ご自身の申告を振り返って、「自分の事業に家事消費はないかな?」と一度確認してみると安心です。