付加価値は足し算じゃない。「分け方」が生む選びやすさ

こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。

先日読んだ本に、コクヨの下地寛也さんの『「しやすい」の作り方』があります。


この本のテーマはシンプルで、「しにくい」を「しやすい」に変えるための仕組みづくり。コクヨのプロダクト開発やオフィス設計に携わってきた著者の経験がベースになっていて、日常の「あれ、なんだか不便だな」という小さな違和感をどう解消するかを、体系的に整理してくれています。


付加価値は「豪華さ」ではない

読んでいて一番印象に残ったのは、「付加価値」という言葉の再定義です。
多くの人が「付加価値=すごい機能を加えること」「豪華にすること」と考えがちです。
たとえば、ホテルならアメニティを増やす、飲食店なら高級食材を使う、みたいな方向です。

でも下地さんは、そうではないと言います。
付加価値とは「お客さんが手に取りやすいように“分ける”こと」。
つまり、盛るのではなく削ることでも付加価値は生まれる、という逆転の発想です。


チョコザップの「着替えなし」

分かりやすい例が、最近よく目にするチョコザップ。
従来のジムは「ウェアに着替えて、靴も履き替えて、ロッカーに荷物を預けて…」と、どうしても一手間かかりました。運動する以前にハードルが高く、結果として続かない人も多かった。

そこでチョコザップは、着替えも靴の履き替えも不要という形に分けました。
設備的に豪華ではないし、器具もシンプルですが、“日常の延長でちょっと寄れる”ことが付加価値になっているんです。


QBハウスの「カットのみ」

もうひとつはQBハウス。
これまでの理美容室は「カット・シャンプー・顔剃り」とフルコースが当たり前でした。
ところがQBハウスは、あえて「カットのみ」に絞り込み、10分で終わるという形に分けました。

これも決して豪華なサービスではありません。
でも、「安く・早く・気軽に」という“行きやすさ”が付加価値となり、多くの人に受け入れられました。


分けることで生まれる価値

この2つの例を見てもわかるように、付加価値は必ずしも足し算ではないんです。
むしろ、既存の概念からあえて切り出して「分ける」ことで、利用者にとっての“しやすさ”がぐっと増す。

付加価値を考えるときに、「どう豪華にするか」ではなく「どう分ければ選びやすくなるか」と視点を変えると、見える景色が変わってきます。
それは小さな事業にとっても有効で、無理に背伸びせずとも工夫次第で新しい価値をつくれるのだと感じました。

本を読みながら、自分の日常の中にも「しにくいを、しやすいに変える工夫」がまだまだあるんじゃないか、と探してみたくなります。
付加価値はすごいものを加えることではなく、分けること。
このシンプルな気付きが、今後の仕事や生活にも役立ちそうです。