こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。
漫画『ファッション!!』って読んだことありますか?
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ファッション業界の青春もの……かと思いきや、人間関係のゴタゴタや“お金のリアル”がかなり刺さる作品です。
中でもインパクト強めなのが「ジャン」。
ナチュラルに人を振り回し、同情を集めては100万円の費用を「数万円にしてよ」と軽く言い、加害者なのに被害者のような立ち回りをする。
しかも悪意むき出しではなく、どこか憎めない雰囲気すらある──そんな厄介なタイプです。
でも今回書きたいのは、ジャン本人ではありません。
ジャンはただの“分かりやすい極端な例”。
現実では、もっと柔らかい形で同じことが起きるよね、という話です。
気づくと「知り合い価格」になってる問題
自営業をしていると、
- 付き合い長いし
- お世話になったし
- 今ちょっと大変そうだし
- 若いし頑張ってほしいし
- 断ると角が立ちそうだし
こんな理由で、つい値引きすることがあります。
相手はいい人なんですよね。
ジャンみたいにグイグイ搾取してくるタイプじゃない。
でも、ここで起きる現象が……わりとジャンなんです。
一回の値引きが、その人の“相場”になる
つい一度だけのつもりの値引きでも、相手の中では
「あ、この人はこのくらいの価格のサービスをしてくれるんだ」
と記憶されます。
だから、
- 次回も同じ価格を当然のように言われる
- 通常価格に戻しづらい
- 追加作業まで“ついでに”お願いされる
- 断ると自分が悪いみたいな空気になる
相手に悪気はないのに、
こちらだけジワジワ疲れていく。
これ、静かなジャン構造です。
忙しいのにお金が残らない人ほど、値引きが原因だったりする
税理士の仕事していると、
「仕事は来てるし忙しいのに、なぜかお金が残らない…」
という話をよく耳にします。
よくよく聞くと、
- 知り合い価格が“デフォ”になっている
- 毎回サービスでやってあげてしまう
- 値上げのきっかけを失って何年もそのまま
- 断るのが苦手で、追加作業が増えていく
など、“優しさ由来の値引き”がじわじわ効いているケースが本当に多い。
月1〜2万円でも、それが毎月続くと年間20万。
もっと多い人もいます。
気づかないうちに、未来の自分のお財布が削れているんですよね。
値付けは「金額の話」じゃなくて「境界線の話」
ジャンって、人の“境界線の弱いところ”にスッと入り込んでくるタイプです。
現実の知り合いはジャンほど極端じゃないけど、
構造は似ています。
だから、値付けって実は
・自分の生活を守るため
・自分の心を守るため
・自分の商売を続けるため
のルールなんですよね。
「値引きしない=冷たい」ではありません。
「値引きしない=長く続けるために必要なこと」です。
まとめ:値付けができたら一人前。だからこそ、最初の壁になる
自営業の世界では昔から、
「値付けができたら一人前」
と言われることがあります。
それくらい、値付けは難しくて、
でも避けて通れない“最初の壁”なんですよね。
知り合いだから、困っているから、応援したいから──
その優しさは大事です。否定するつもりもありません。
ただ、
頑張っているのにお金が残らない理由のひとつは、値引きかもしれない。
ジャンみたいな極端な例ではなくても、
静かに同じ構造は起こります。
未来の自分を守るためにも、
境界線としての「値付け」。
大事にしていきたいところです。
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伊藤 功明(税理士)
仙台を拠点に、個人事業主や小さな法人の税務をサポートしています。
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