こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。
このブログでは「拡大しなくてもいい」という話を何度か書いてきましたが、
今回は少し立ち止まって、改めてその理由をまとめてみました。
これまで書いた内容と重複する部分もありますが、
自分の考えを整理する意味でも、一度しっかり言葉にしておこうと思います。
拡大の途中で崩れていく会社を何度も見てきた
新卒で会計事務所に入り、10数年。
気づけば100社近くの企業を見てきました。
その中には、順調に見えていたのに、
“拡大”をきっかけにバランスを崩してしまう会社がいくつもありました。
売上が伸び、人が増え、事務所を広げ、借入をして設備投資もした。
ここからもっと上へ──そんな期待が膨らんだ瞬間に、
急にペースが乱れはじめる。
人が定着しない、品質が揺らぐ、固定費が重い、キャッシュが持たない。
最後はメンタルが先に限界を迎えてしまい、
倒産に至ったケースもあります。
ドラッカーのいうとおり、
企業の目的は“継続すること”だと強く思います。
派手な成長よりも、損益分岐点を見極めて、
じっくり生き残り続ける企業のほうが、長期的に見てよほど力強い。
そんな光景を、嫌というほど見てきました。
起業時点のスキルと、拡大フェーズで求められるスキルは全く違う
もうひとつ、拡大に慎重になる理由があります。
独立したばかりの頃に必要なのは、
自分の技術や、お客さまとの関係づくり、小さな集客など、
“本人のスキル”が中心です。
ところが、人を雇った瞬間から求められるものが一変します。
マネジメント、採用、教育、数字管理、意思決定……。
完全に、別の職業です。
独立して順調にいく人は、前半戦（プレイヤー型）に強いタイプが多いですが、
後半戦（マネジメント型）が得意かどうかは、また別の話。
この2つにはほとんど連続性がありません。
「とりあえずやってみよう！」で突っ込むと、
従業員や家族の生活に責任を負う立場になり、
借入の返済や取引先への説明責任も出てきます。
そして、拡大してしまったあとには、
“後戻りができない”という現実が待っています。
これを目の前で見てきたからこそ、
拡大には相当な覚悟が必要だと感じています。
組織が苦手。そもそも自分が拡大に向いていない（笑）
そして最後は、かなり個人的な理由です。
私は、人は好きですが“組織”が苦手です。
人間関係の問題ではなく、
組織という仕組みにテンションが合わないだけなのだと思います。
そもそも「組織が嫌で独立した」のに、
自分が組織を作るというのは、どう考えても矛盾しています（笑）
だったら、自分のペースで、
小さく、しっかりと、好きな仕事を続けられるほうが向いている。
そう感じています。
周りが拡大していても、
“成長＝正義”みたいな空気に合わせる必要はありません。
小さな商売には、小さな商売にしか出せない強みがあります。
距離の近さ、温度、融通の利き方。
私はこの世界が好きです。
まとめ：自分のサイズで続けていい
拡大が悪いわけではありませんが、
これまでの経験から、私はどうしても慎重派です。
自分に合うサイズで穏やかに続けるほうがしっくりきます。
それに、SNSで見かける“キラキラ経営者風”の世界は、
だいたい見せかけです。
本当に安定して続けている人ほど静かに仕事をしています。
だから、周りに流されて無理に大きくならなくても大丈夫。
いまの規模で心地よく続ける──そんな選択も、立派に正解です。