「フルサポートサービス」か「ミニマルサービス」か──私の商品設計プロセス

こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。

今日は、私自身が事務所のサービスを設計する中で強く感じた
フルサポートサービス=足し算ミニマルサービス=引き算
この二つの考え方について、マーケティングプロセスの実体験としてまとめてみます。

開業される方や、これから商品づくりを考えている方にとって、何か一つでも参考になればうれしいです。
もちろん「これが正解」という話ではなく、あくまで私のケーススタディとして読んでいただければと思います。


商品設計は「自分のコンセプト」から始まる

私の事務所コンセプトは、ずっと変わらず
「必要なときに、そっと頼れる存在」
です。

距離感を詰めすぎない。
でも、必要なサポートはしっかり届くようにしておく。
いわば “程よい距離で寄り添う” というスタンスです。

この前提があるからこそ、サービス内容を“盛り込みすぎない”ことが、むしろ自然でした。
開業税理士の世界では「フルサポートのほうが価値がある」という空気がありますが、コンセプトとの整合性を考えると、私はそうじゃないなと気づきました。


フルサポートサービスは「売り手目線」で考えると最強に見える

普通に考えれば、

  • 月次面談
  • 深い分析
  • 定期レポート
  • ワンストップサービス

など、フルセットでサービスを盛ったほうが“良い商品”に見えます。

買い手側も、同じ料金ならフルサポートのほうが良いと思うのが自然です。

ただ──ここに盲点があります。

フルサポートの需要は、規模の大きい法人ほど強い。
そして、そのニーズに真正面から応えようとすると、提供側も組織として大きくならざるを得ないんですよね。

スタッフを増やし、マネジメントし、さらに手厚くするための仕組みづくりをする。
これはこれで立派な戦略ですが、私自身が目指す働き方とは違いました。


一方で、近年は「ミニマルサービス」が追い風になっている

経済が成熟し、モノもサービスも情報も溢れた結果、
“必要十分でいい”という価値観が強くなっています。

例えて言うなら、

  • チョコザップ:サービスを絞ることで“行きやすさ”に集中
  • IKEA:組み立てを利用者に任せる代わりに、価格やデザインの自由度を確保
  • 具なしカップラーメン:具を引いて、その分 スープや麺の自由度を強化

こうした「ミニマルな価値づくり」は、
限られた資源で工夫する時代の“引き算”と言えます。

税理士業界でも同じで、

  • 必要なときに質問できれば良い
  • 毎月の訪問は不要
  • 高度なコンサルは求めていない
  • 商売を続けるための最低限があれば十分

こういうニーズは、小規模事業者ほど強いものです。


「ミニマルサービス」を求める層のペルソナ

マーケティングプロセスでは、
“誰に届けるのか” を決めるのが最優先です。

私の場合、その答えは明確でした。
私が届けたいのは、小さな商売の人たち

  • コンサルまでは求めない
  • 複雑な税務判断が頻繁にはない
  • 自分のペースで淡々と働きたい
  • 過度に介入されるのは苦手

こういった方々は、“フルサポート”より ミニマルサービスのほうが相性が良いのです。

そしてこれは偶然ですが、
私自身が昔から好きだった「職人的」な商売の人たちと、自然に重なりました。

学生時代、個人商店巡りが好きで、
静かに、自分の世界で仕事を続ける感じに憧れていました。
今は、そのような方々を支える仕事をしています。


まとめ:フルサポートかミニマルか。大事なのは“自分のコンセプト”

フルサポートが悪いわけではなく、
ミニマルが優れているという話でもありません。

結局は、
“自分はどんな存在でありたいのか”
そのコンセプト次第です。

私の場合は、

  • 程よい距離感
  • 必要なときに頼れる安心
  • 小さな商売の職人さんを支えるスタイル

この価値観に最も合ったのが、ミニマルサービスでした。

必要十分で、ちょうどいいサービス。
そんな設計を考える際のヒントになればうれしいです。

おまけ:この記事をひとことで言うと「STP分析」です

マーケティング本を読むといろいろ出てきますが、
今回の内容にいちばんしっくり来るのは STP分析 です。

  • S(市場を分ける)
     手厚いサービスが必要な層 / 最低限で十分な層
  • T(誰に届けるか)
     小商い・職人的な人たち
  • P(どう見られたいか)
     「必要なときに、そっと頼れる存在」

つまり、この記事で書いた「足し算か、引き算か」の判断は、
実はこの STP が自然に導いた答え なんですよね。

マーケティング本を読んでピンとこない方は、
まずこの STP だけ押さえておけば十分だと思います。

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伊藤 功明(税理士)
仙台を拠点に、個人事業主や小さな法人の税務をサポートしています。
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