インボイス登録後、免税事業者に戻るには何が必要?

こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。

最近とても多くいただく質問に、次のようなものがあります。

「来年から免税事業者に戻したいのですが、売上も免税点以下になりましたし、取引先からも『インボイス登録は無くて大丈夫ですよ』と言われています。こういう場合、どんな手続きが必要ですか?」

制度が複雑なこともあり、
「免税に戻れる条件は満たしているはずなのに、実際に何をすれば良いのか分からない」
という声はとても多いです。

実は、この疑問の答えはとてもシンプルで、
“今、どういう理由で課税事業者になっているのか”
ここが分かれば、必要な手続きも整理できます。

今回は、実務で圧倒的に多い 2つのパターン に絞って解説します。


インボイス登録が理由で課税事業者として扱われている場合

基準期間(2年前)の売上が1,000万円以下で、本来は免税事業者。
ただし、インボイスに対応するために 適格請求書発行事業者として登録 し、その結果、課税事業者として扱われているケースです。

この場合、必要な手続きはとてもシンプルです。

必要な手続き

適格請求書発行事業者の登録取消届

これだけで足ります。

インボイス登録の効力がなくなると、
「課税事業者として扱われる根拠」が消えるため、
基準期間の売上判定に従って、翌年から免税事業者に戻ります。

提出期限

インボイス登録の取消しは、
免税に戻りたい課税期間の初日から起算して15日前まで に行う必要があります。

個人事業主の場合でいうと、

  • 翌年1月1日から免税に戻したい場合
    前年の12月17日まで が提出期限です。

この期限を過ぎると、免税に戻れるのはさらに1年後になってしまうため、注意が必要です。


基準期間の売上が1,000万円を超えて課税事業者となっている場合

もうひとつ多いのがこちらです。

基準期間(2年前)の売上が1,000万円を超えていると、
消費税法上の判定により、課税事業者となります。

その後、売上が1,000万円を下回り、
「来年から免税事業者に戻したい」というケースです。

この場合、必要な手続きは 2つ あります。

必要な手続き①

適格請求書発行事業者の登録取消届
(インボイス登録をしている場合)

インボイス登録を続けている限り、免税事業者には戻れません。
まずは登録の取消しが必要です。

必要な手続き②

消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書
基準期間の売上が1,000万円以下となり、
翌年から免税事業者となることを税務署に届け出るための書類です。

提出時期

「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」には、
インボイス登録取消届のような明確な日付期限は定められていません。

国税庁の様式上の整理では、
免税事業者となった場合に「遅滞なく提出する」
という扱いになります。

実務上は、
免税事業者に切り替わる年の 年内に提出しておくと手続きがスムーズ なため、
そのタイミングで出すことが多い、という位置づけです。

インボイス登録の取消しは、同様に
免税に戻りたい課税期間の初日から起算して15日前まで に行う必要があります。


参考:課税事業者選択届を出しているケースについて

あまり多いケースではありませんが、
自ら課税事業者を選択している場合(課税事業者選択届出書を提出している場合)は、
今回の整理とは別の扱いになります。

免税に戻すには「選択不適用届」が必要となるため、
該当する場合は個別の確認が必要です。

今回は詳細な説明は省略します。


まとめ

消費税の課税・免税の切り替えは、
「なぜ今、課税事業者になっているのか」
ここを整理することが何より大切です。

  • インボイス登録が理由の場合
    → 登録取消届のみ(期限は原則12月17日まで)
  • 基準期間の売上が理由の場合
    → 登録取消届(該当する場合)+ 納税義務者でなくなった旨の届出書

なお、すべての方がこの日程で免税事業者に戻れるとは限りません。
過去のインボイス登録時期や、売上状況等によっては、一定期間は免税に戻れないケース(いわゆる「2年縛り」など)もあります。

「売上的には免税に戻れそう」「取引先もインボイスは不要と言っている」
そんな場合でも、手続きや期限を間違えると、翌年も課税事業者のままになってしまいます。

気になる方は、早めに状況を整理しておくと安心です。


伊藤 功明(税理士)
仙台を拠点に、個人事業主や小さな法人の税務をサポートしています。
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