なくなってから気づく、「続いていること」の価値

こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。

先日、結婚式を挙げた教会が取り壊される、という話を聞きました。
披露宴会場は残るそうですが、挙式そのものは別の形に移行するとのこと。
修繕費や固定費、ブライダル業界全体の流れを考えると、規模縮小はやむを得ない判断なのだと思います。

それでも、やっぱり少し寂しいですね。

ゆかりのある場所が消えていく感覚

私は個人商店めぐりが趣味で、昔からいろいろなお店に通ってきました。
そして同時に、閉店のお知らせも本当にたくさん見てきました。

理由はさまざまです。
体力的問題、家賃の問題、時代の変化。
どれも「仕方ない」と頭では分かるのですが、
いざシャッターが下りると、やっぱり寂しい。

「もう一度行っておけばよかったな」
「もっと利用しておけばよかったな」
そんなことを思うたびに、事業が“そこに在り続ける”ことの価値を感じます。

事業の目的は「継続」だと思う理由

顧客の立場で考えると、
事業に一番求めているものは、実はとてもシンプルで
「続いていること」なんじゃないかと思うんです。

もちろん、サービス内容や価格、対応の良さは大事です。
でも、それ以前に
「次もお願いできる」
「来年もそこにある」
この安心感は、かなり大きい。

私は税理士という立場柄、事業が終わる瞬間にも立ち会います。
そのとき、残るのは数字だけじゃなくて、
「あの店、無くなっちゃったんだよね」という感情だったりします。

規模拡大=安定、とは限らない

よく
「規模を大きくすれば安定する」
と言われますが、私は必ずしもそうだとは思っていません。

むしろ、
拡大の途中にある“中途半端な規模”が、一番危うい。
固定費は増え、責任も増え、それなのに身軽さはもう無い。

小さな商売としての強みを失い、大きな組織ほどの体力も無い。
このゾーンで無理をすると、簡単にバランスが崩れます。

キラキラ経営者の話と、顧客の本音

SNSを見ていると、いわゆるキラキラした経営者の方が
「マーケ(おそらくマーケティングのこと)」について
熱く語っている場面をよく見かけます。

それ自体を否定するつもりはありません。
ただ、正直なところ、規模が拡大しようが、有名になろうが、
私は「凄いっすね」以上の感情はあまり湧きません。

顧客の目線で見ると、世界を変えるかどうかよりも、
明日もそこにあるかどうか。来年も相談できるかどうか。
そのほうが、よほど大事だったりします。

「なくなったとき」を想像できているか

事業を考えるとき、
「どう売るか」「どう広げるか」だけでなく、

・この事業が無くなったら、顧客はどう感じるか
・困る人はいるのか
・それとも、すぐ代替が効く存在なのか

こうした視点を持つことは、とても大切だと思います。

派手さはなくても、静かに、淡々と、必要とされ続ける。
個人的には、そういう事業のほうが、ずっとかっこいいと感じます。

事業の目的は、成長ではなく継続。
少なくとも私は、そう考えています。


伊藤 功明(税理士)
仙台を拠点に、個人事業主や小さな法人の税務をサポートしています。
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