わたしの修行時代:3社目(はじめての税務調査)

1社目で“仕事の基本”を叩き込まれ、
2社目で“道に迷い”、
そしてたどり着いたのが、地元の老舗中堅税理士法人
ここでは、丸5年間勤務しました。

仕事の幅が広がり、実務の手応えも増えて、
ようやく「土台ができた」と感じられる場所でした。


■ 繁忙期以外は、ほぼ定時退社

この事務所の良いところは、税理士試験への理解が深かったこと。
繁忙期は当然バタバタするけれど、それ以外は「早く帰って勉強していいよ」という空気感。

実際、定時でサクッと帰れる日も多く、
試験勉強と両立できる環境としては、かなり恵まれていたと思います。


■ はじめての税務調査

この3社目で大きな学びになったのが、税務調査の立ち会い経験でした。

調査官が何をどう見て、どんな手順で進めていくのか。
“あえて触れない箇所”にどんな意図があるのか。
そういったリアルな現場を経験することで、
日常業務の中でも「ここは後から説明がつくようにしておこう」とか、
「この処理は、調査官目線でもOKか?」と、
一歩引いた視点で仕事を見られるようになっていきました。

この「実務感覚」は、今もずっと活きています。


■ 税理士試験と大学院進学

とはいえ、税理士試験の結果はなかなか出ず。
試験に落ちた日の夜は、1日中ふとんにくるまって号泣していたこともあります。

それでも、「まだやれる」と思いたくて、大学院ルートに進むことを決意。
進学した大学院では、ほとんどが税理士事務所で働く社会人。
しかも「あと1科目で税理士!」という人がゴロゴロいて、
自分との差に焦りつつも、「あ、ゴールって本当にあるんだ」と、はじめて現実味が湧きました。

そして何より、そこにいた仲間たちは、今もつながっている大切な税理士仲間です。


■ やりがいと、モヤモヤ

この事務所での日々にはやりがいもあったし、信頼してくれる顧問先にも恵まれていました。
自分の仕事が人の役に立っていると感じる場面もたくさんあって、それはやっぱり嬉しかった。

けれど、時間が経つにつれ、少しずつモヤモヤが積もっていきました。

たとえば、退職者が出るたびに、担当が増える
採用は後手に回り、気付けば、残った人に負担が集中していく。
「これって、人を採用してまで回さなきゃいけない仕事なのか?」
ふと、そんな疑問がよぎるようになりました。

だんだんと、“なぜこの仕事をしているのか”が分からなくなってくる。
毎日、タスクに追われるだけで、前を向いている感じがしない。
そんな気持ちのまま、ただ日々をこなしていくようになっていました。


■ そして、転職へ

ちょうどその頃、仲の良い同僚が退職。
ぽっかり空いた穴と、静かに押し寄せる喪失感。

そして大学院の同期たちを見ていて、
「自分ももっと大きな組織で、違う規模の仕事を経験してみたい」
そんな気持ちが湧いてきて、次のステップに進むことを決意しました。


この3社目は、“ちゃんと働く”ことと“ちゃんと学ぶ”ことを、両立させてくれた場所でした。
実務の感覚と、これからの選択の軸を手に入れたこの時期は、
自分にとって大きな転換期だったと思います。

アイキャッチ画像:大学院の自習室。ここで論文書いたり税理士試験の勉強したり。秘密基地感があって好きでした。

5年働いていたこともあって、たとえば顧問先の社長と飲みに行ったり、より深い関係を築けたのも良い経験になったなあと思います。