こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。
事業を始めたばかりの方から、よく聞かれる質問があります。
「領収書やレシートはスクラップブックに貼った方がいいですか?」というものです。
私としての回答はシンプルで、「貼らなくて良い」です。
なぜ「貼る」イメージがあるのか?
インターネットで検索すると、「領収書をスクラップブックに整理する方法」といった記事や、経理の入門本のイラストで「きちんと貼っているイメージ」が紹介されていることが多いようです。
見た目も整っていて、一見すると“ちゃんと経理している”気分になれる。そうしたイメージが「領収書=貼るもの」と刷り込まれているのだと思います。
税法上の保存要件
税法上、レシートや領収書を「貼る」義務はありません。
要件はシンプルで、帳簿や証憑を保存して、必要なときに提示できることです。
国税庁が公表している「帳簿書類等の保存」でも、スクラップブックやファイルの形式までは指定していません。
つまり、「証拠を整理して取り出せる状態」さえ保てばよいのです。
レシートを貼るメリットとデメリット
メリットをあえて挙げるなら、「なくしにくい」という点です。スクラップブックに糊付けしてしまえば、散らばることはありません。
ただし、デメリットは多いです。
- とても手間がかかる
- のりがはみ出してレシート同士がくっついて破れてしまう
- 貼った上に折り畳む人もいるが、結局パッと見て中身が分からない
「きれいに整理しているように見えるけど、実際に調べたいときには逆に不便」ということが多いのです。
おすすめの整理方法
私がおすすめするのは、100円ショップなどで売っているフリーザーバッグを使う方法です。
- 月ごとに袋を分ける
- マジックで「○年○月分」と記載しておく
- 1年分(法人なら事業年度ごと)でまとめて保管
これだけで十分です。税務調査などで証憑を見たいと言われたときに、すぐ取り出せれば何の問題もありません。
本業に集中できる形を選ぶ
経理の細かい部分に時間をかけすぎると、本業に割けるエネルギーが削られてしまいます。
「昔からこうやっているから」「ネットで見たから」という先入観は一度横に置いて、楽な方法を取り入れていきましょう。
大事なのは「整理のきれいさ」ではなく、「必要なときに証拠をすぐ出せること」。
レシートは貼らずに、シンプルに保管するだけで十分なのです。
※なお、電子帳簿保存法を利用して電子保存を選ぶ場合は、別途ルールがあるので注意してください。