たまに耳にする言葉があります。
「ずっとこれで確定申告通ってるよ」
言ってる本人は、ちょっと自信ありげで、
どこか「自分のやり方、間違ってないから」という安心感に包まれている。
でもこれ、本当に“通ってる”って言えるんでしょうか?
今日はそんな話を、少しだけ。
■ まず、「確定申告が通る」って何?
この言葉、正式な定義があるわけじゃありません。
でもなんとなく、
- 提出してOKだった
- 税務署から何も言われなかった
- 税務調査があっても大丈夫だった
みたいな意味合いで使われていることが多い気がします。
■ ① 税務署に提出して、何も言われなかった?
これはたしかに「通ったように見える」ケースです。
でも実際は、税務署はすべての申告内容を細かくチェックしているわけではありません。
よっぽど明らかなミス(例えば、予定納税の支払い漏れや、控除の入力ミスなど)がない限り、
提出された申告書に対して連絡が来ることはあまりありません。
つまり、“何も言われなかった”=“正しい”とは限らないんです。
■ ② 税務調査が来たけど、指摘されなかった?
これもよくある話ですが、注意が必要です。
税務調査って、限られた時間と人手のなかで行われています。
すべての書類をすみずみまで見るわけではありません。
調査官にも優先順位があります。
もっと大きな問題が他に見つかれば、そちらを優先して時間を使います。
なので、「何も言われなかった=問題なかった」とは言い切れない。
本当は他にもあったけど、今回は触れられなかっただけかもしれません。
■ ③ 税務調査で指摘されて、それでも是正されなかった?
ここまで来ると、ようやく「通った」と言っていいかもしれません。
申告内容について調査官と議論して、
最終的に「修正の必要なし」と判断された場合、
その時点では、ひとまず“通った”と呼べる。
でも、これだってあくまでその時、その担当者の目線での話です。
他の調査官なら違う見方をするかもしれないし、
制度の運用が変われば、判断も変わるかもしれない。
■ じゃあ何を信じればいいの?
結局のところ、
「これでずっと通ってるから安心」ではなくて、
「今の知識と判断で、ちゃんと考えて出したか?」
が一番大事なんだと思います。
税務って、白黒はっきりしないことも多い。
だからこそ、グレーの中で「なぜこの判断をしたか」を説明できることが大切なんです。
■ 最後に
確定申告は、提出して終わりじゃないし、
調査がなかったからって“正解”とは限らない。
でも、モヤモヤするのって悪いことじゃないと思います。
「これでいいのかな?」って感覚があるからこそ、ちゃんと考えられるし、見直せる。
そのモヤモヤを、誰かと一緒に確認できたら、ちょっと安心できるかもしれません。
私はそういう“税務の外周”にいる存在でいたいと思っています。