売上拡大と借入、その前に考えておきたいこと

こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。
今回は「売上拡大と借入増は、本当に経営の成功と言えるのか?」というテーマで、よくある思い込みに立ち止まってみたいと思います。


売上が増えると、本当に余裕が出るのか?

「売上をもっと増やしたい」
「そのためにお金を借りて、人も雇って、事務所も構えて…」

そんなふうに、売上拡大=経営の成長と考えるのは自然なことです。
でもその裏側で、お金や責任がどう変わるのかを、冷静に見たことはありますか?


売上を伸ばすには、先に「出ていくお金」がある

売上は、放っておけば自然に増えるものではありません。
そのために、先にさまざまな支出が発生します。

  • 人を雇えば人件費
  • 広い事務所を借りれば家賃
  • 広告やシステム投資も必要

つまり、売上を伸ばすには、先に投資が要るのです。
そして、その投資をまかなうために出てくるのが「借入」です。


借入ができることは信用か?

よく「借入ができるのは信用の証」と言われます。
実際、資金調達ができる経営者は前向きに評価されがちです。

でもここで、一度通帳と借入残高を見比べてみてください。

  • 通帳残高はいくらか
  • 借入残高はいくらか

本当に自由に使えるお金は、どれくらい残っていますか?


銀行は“社会の味方”か、“株式会社”か

銀行は社会インフラである一方、利益を追求する株式会社です。

  • 貸せば利息が入る
  • 担保があれば損をしない

つまり、銀行にとって「貸すことがビジネス」であり、
借りることが“信用の証”とは限らないという現実があります。


実は、売上もキャッシュフローを圧迫する

借入はもちろん、売上そのものもキャッシュフローを悪化させることがあります。

なぜか?

  • 売上は掛け取引が多い(あとで入金)
  • 一方で、仕入・人件費・外注費は先払い
  • 結果、一時的に手元資金が不足しやすくなる

さらに、売上が増えれば、

  • 消費税・法人税の納税額も増える
  • でも、納税のタイミングまでに現金が用意できないこともある

つまり、売上が増えた=お金が増えた、ではないのです。
むしろ売上増が、資金繰りを悪化させることもあるのです。


売上増は、責任とリスクも増やす

もう一つ見逃せないのが、売上増=責任増です。

  • クレームや納期遅延など、トラブルの件数が増える
  • 社員や外注のマネジメントが大変になる
  • 売掛金の回収リスクも高まる

売上が倍になれば、経営者が背負うストレスも倍以上になることがあります。


経営者の手取りは、実際どうなるのか?

結局、売上が増えても…

  • 経費と返済に消える
  • 税金でさらに減る
  • 責任と不安だけが増える

こうして、「がんばっているのに、なんでお金が残らないんだろう?」という状態に。


拡大しない、という選択肢

売上を無理に伸ばさなくても、

  • 自分に合ったサイズ感で
  • 気持ちよく働けて
  • ちゃんとお金も残る

そんな経営のかたちもあります。
実際、私の関与先でも「拡大したけど戻した」「小さく続ける方が心地いい」という声はたくさんあります。


まとめ|まずは通帳と借入を見比べてみる

経営において大切なのは、「どれだけ売上を上げたか」ではなく、「いくら手元に残ったか」です。
そして、「そのやり方が、自分にとって幸せかどうか」

まずは一度、通帳と借入残高を見比べてみてください。
増えているのは「売上」だけでなく、「責任」や「支出」になっていないでしょうか?

そんな視点を持つことが、拡大しないけれど満足度の高い経営への第一歩かもしれません。