こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。
フランチャイズの加盟店紹介や、事業紹介のページを見ていると、
「全店黒字!」
「順調に運営中!」
といった言葉を目にすることがあります。
ぱっと見は、とても安心感がありますし、
「じゃあ大丈夫そうだな」と思わせる力もあります。
ただ、数字を仕事にしている立場としては、
どうしても一歩立ち止まって考えてしまいます。
その“黒字”、どういう黒字なんだろう?
今日はフランチャイズをきっかけにしつつ、
本題としては「個人事業主が黒字という数字とどう向き合うか」、
数字の見方について書いてみます。
きっかけは、あるフランチャイズの紹介文
まず前提として、これは一般論ではありません。
私が今回目にしたフランチャイズでは、
ビジネスモデルを見ていると、
加盟店の過半数は個人事業主だろうな、と思える構成でした。
この前提に立つと、
「全店黒字」という言葉の意味合いが、少し違って見えてきます。
個人事業主にとっての「黒字」の位置づけ
個人事業主は、生活費を事業の利益から支払います。
・自宅家賃
・食費
・家族の生活費
これらは、原則として経費にはなりません。
つまり、
生活できている
= 利益が出ている
= 黒字
という構造になります。
言い換えると、
黒字は「調子がいい証拠」というより、
生活を成り立たせるための前提条件に近い数字です。
法人と比べると、黒字の意味がよく分かる
ここで、法人と比べてみると分かりやすくなります。
法人の場合、社長にはまず役員報酬が支払われます。
この役員報酬が、生活費にあたります。
そのうえで、
・売上
・経費
・役員報酬
をすべて差し引いた残りが、法人の黒字か赤字か、になります。
つまり法人では、
生活費をきちんと払ったあとで、
それでもお金が残っているかどうか
を見ているわけです。
個人事業主の黒字は「生活費込み」
一方、個人事業主は違います。
個人事業主の黒字は、生活費を差し引く前の数字です。
法人で言えば、
役員報酬を払う前の段階で
「黒字か赤字か」を見ているようなものです。
この違いを知らないと、
・個人事業主の黒字
・法人の黒字
を、同じ感覚で見てしまいがちです。
黒字=余裕、とは限らない理由
ここで、もう一段だけ踏み込みます。
借入金の存在です。
借入金の返済は、
・利息 → 経費
・元本 → 経費にならない
という扱いになります。
元本返済は、
黒字になったお金の中から支払うしかありません。
決算書は黒字。でも実態を見ると
実務でよく見るのは、こんな状態です。
・決算書は黒字
・税金も発生している
・借入返済がある
・生活費もそこから出している
結果として、
通帳の残高は思ったほど増えていない、
むしろ減っている、ということもあります。
外から見ると
「黒字で順調そう」
でも中身を見ると、
数字上は順調に見えても、
よく見ると、生活費を借入金でつないでいる状態
に近いケースもあります。
「嘘ではないが、ミスリードしやすい数字」
ここまでの話をまとめると、
黒字という言葉は、
嘘ではないけれど、かなりミスリードしやすい数字
だと思っています。
黒字かどうかだけでは、
・キャッシュが残っているか
・精神的に余裕があるか
・この状態を何年続けられるか
といったことは、ほとんど分かりません。
個人事業主が本当に見るべき数字
個人事業主の方にとって、
大事なのはとてもシンプルです。
・借入返済後に、手元にキャッシュが残っているか
・生活費を払っても、余力があるか
・「今は回っている」ではなく、「続けられる状態」か
黒字か赤字か、という二択ではなく、
その黒字の中身を見ること。
黒字と、どう向き合うか
黒字を出すこと自体は、もちろん大切です。
ただ、黒字という言葉だけで安心してしまうと、
実態とのズレに気づきにくくなります。
特に個人事業主の場合、
事業の数字と生活の数字が、どうしても混ざり合います。
だからこそ、
「黒字だけど、実際どうなんだろう?」
「このペース、無理なく続けられるかな?」
そんな視点で、一度数字を見直してみるといいでしょう。
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伊藤 功明(税理士)
仙台を拠点に、個人事業主や小さな法人の税務をサポートしています。
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