小さな商売に、金融の正解を持ち込まない

こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。

「利益が出たら税金を払うのはもったいない」
「借入して投資すれば、税金を減らしながら事業を回せる」

ここ数年、こんな話を見聞きする機会が増えました。
ですが、実務の現場にいる立場としては、どうしても引っかかるところがあります。

今回は、資金繰りと利益、納税の関係について、少し整理してみます。


資金繰りを考えなくていい状態は、最強

事業をしていて一番しんどいのは、
「今月大丈夫かな…」とお金の心配をしながら意思決定をする状態です。

逆に、

  • 数か月分の固定費を現預金でカバーできる
  • 売上が多少ブレても慌てない
  • 目先ではなく、中長期で判断できる

この状態になると、事業は一気に楽になります。
そしてこの状態は、利益を出して、きちんと納税して、お金を貯めてきた人しか到達できないのも事実です。


「借入+投資+節税」が正義、という違和感

最近よく見るのが、

  • 借入して
  • 必要性の薄い投資をして
  • 利益を圧縮して税金を払わない

これを「賢い経営」「攻めの節税」とする考え方です。

もちろん、借入も投資も否定しません。
問題は、順番が逆になっていることです。

本来は、

  • 事業に本当に必要な投資がある
  • そのための資金調達として借入をする
  • 結果として利益や税額が変わる

この流れのはずです。

「税金を払いたくないから借りる・使う」は、
かなりギャンブルに近い判断だと感じています。

(元金融機関資金調達コンサルみたいなやつの声がでかすぎる件)


金融の論理は、小さな商売には強すぎる

この考え方、どこから来たのかというと、
金融や投資の世界の影響が大きい気がします。

金融の世界では、

  • レバレッジは武器
  • キャッシュは遊ばせるな
  • 成長が前提

が、わりと常識です。

ただ、小さな商売は前提条件がまったく違います。

  • 事業も生活も一体
  • 失敗時のリカバリーが難しい
  • 借入が精神的な足かせになりやすい

この違いを無視して同じ理屈を当てはめるのは、正直危ういです。


納税できるのは「勝っている証拠」

「税金を払うとお金が減る」と思われがちですが、
実際には、

  • 適切な値付けができている
  • 仕事として価値を認められている
  • 利益構造が成立している

という結果が、税額として現れているだけです。

そこを壊してまで利益を圧縮すると、
自分のビジネスモデルそのものを否定することになりかねません。

税金は敵ではなく、
「ちゃんと生き残れている証拠」くらいに捉えてもいいと思います。


成長より、まずは継続

借入して拡大する経営も、否定はしません。
ただ、小さな商売にとって一番大事なのは、

続けられること
判断に余裕があること
資金繰りに追われないこと

そのためには、
まずは利益を出し、納税し、現金を積み上げる。
地味ですが、これが一番確実な道だと感じています。

「税金を払わない経営」が正義、という空気に、
少し立ち止まって違和感を持つ。
それだけでも、経営はずいぶん安定するはずです。


伊藤 功明(税理士)
仙台を拠点に、個人事業主や小さな法人の税務をサポートしています。
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