こんにちは。仙台の税理士、伊藤です。
最近『小さな会社の売れる仕組み』(久野高司さん)という本を読みました。
マーケティング本はこれまでにも色々読んできましたが、今回の本は「独立前に読んでおきたかった…」と思うくらい、自分の経験とつながるところが多い内容でした。
本書の概要 ― 小さくても“勝ち方”はある
本書の主張はとてもシンプルで、「小さな会社は、大手や老舗と真正面から戦う必要はない」というものです。
ポイントは3つ。
- お客様は、選択肢の中から“自分にとって最も都合の良いもの”を選ぶ
- だから、小さな会社は“小さな市場のトップ”を狙うのが合理的
- そのために必要なのは、「特定のお客様 × 特定の目的(ニーズ) × 特定の強み」の一致
広い市場で大手と張り合うのではなく、
「ここなら自分を選ぶ理由がある」という小さな領域に集中する。
そのほうが無理がなく、長く続けられるし、お客様にも喜ばれます。
読んでいて、「あれ?独立準備のときに考えていたこと、そのまま理論になってるな…」と感じました。
独立準備のときに感じていた「どう戦うか問題」
仙台には、いまも地元の老舗事務所や大手税理士法人がたくさんあります。
独立を考えはじめた頃、まず直面したのが「この中でどうやって見つけてもらうのか?」という問題でした。
SEOでも紹介でも、どうしても先に名前が挙がるのは老舗や大規模な事務所。
税理士を探す人の多くは、まず“有名そうな事務所”に相談するのが自然です。
そこで勝負をすると、だいたいは価格競争に流れがち。
「このまま同じ方向に行くのは違うよな…」と独立準備中にずっと考えていました。
今のメインのお客様は“勤務時代に自然とうまくいっていた層”
そんな中で思い出したのが、勤務時代に特にやりやすかったお客様層です。
そして実際、独立して数年たった今も、メインのお客様はその延長線上にいます。
それは“大きな会社”ではなく、“小さな商売”の方たち。
具体的には、
- 個人事業主
- 年商1,000万円くらいの小規模法人
(と言いつつ、年商3,000万円くらいまでは普通に受けています) - 事業の規模拡大をとくに考えていない方
この規模のお客様は、経営戦略のためのコンサルや、形式的な財務打ち合わせよりも、まずは本業に集中したい というニーズが強い印象があります。
また、小さな商売は日々の業務が詰まっているので、
電話や面談よりも、スキマ時間でやり取りできるテキストベースが喜ばれる という特徴もあります。
職人肌の事業主さんや、一人で全部抱える社長とは、勤務時代も独立後も一番ストレスの少ない関係でした。
今回の本を読んで、「ああ、これは“特定のニーズと自分の提供スタイルが合っていた”ということなのか」と素直に納得しました。
大学院の講義にも活かせそう
年に一度、大学院で講義をしています。
テーマは自由なので、これまでも経験談を交えながら「税理士のマーケティング」という題で話してきましたが、今回の本は実務経験とのつながりがとても分かりやすい内容でした。
- なぜ大手と同じステージに行かなかったのか
- なぜ“小さな商売向け”に寄せたのか
- なぜ広告や営業をそこまで頑張らずに成立したのか
こういったところに理論の裏付けがつくので、来年の講義資料はもう少しブラッシュアップできそうです。
おわりに
独立してから数年経ち、やってきたことを「理論として説明できる形」に整えてくれる一冊でした。
経験と理論がつながる瞬間は、なんだか気持ちいいものです。
とは言え、コロナ禍を経て非対面でのやり取りが一般的になり、
同じような方向性を考える税理士も増えてきました。
便利だったものが、気づけば“当たり前”になり、
当たり前だった価値は、いつしか“不要な価値”になる。
だからこそ、今のやり方に安住せず、
小さな商売の方にとって本当に必要なものは何か──
次の一手は、常に考えていきたい と思います。

